先日、9月29日に京都府亀岡市へ行ってきました!
亀岡市は旧・丹波国の国府があったと言われ、丹波国一宮の「出雲大神宮」も鎮座していることから、丹波国の中心地だったと言えます。
また、亀岡市一帯に広がる亀岡盆地はかつて湖で、神様がこれを干拓して開発したという面白い伝承も各地に伝わっています。
ただ、今回はこれらには触れません。
その辺りをテーマにした旅は過去に行ったため、いずれそのまとめをブログ記事にしたいところです。
2023/11/21追記
実は今回旅を行った2023年9月29日は旧暦の八月十五日、つまり中秋節にあたります。
中秋節の夜は「十五夜」、十五夜に浮かぶ月は「中秋の名月」と呼ばれ、古くから月見をする風習がありました。
実は亀岡市には月に因んだ古い神社がいくつかあります。
せっかく中秋節なので、今回はこれら月に因んだ神社を巡ってみようという魂胆なのです!
また今年は暑さが長引いたため彼岸花の開花が遅れていました。
そのお陰でこの日に彼岸花の見頃と重なりそうな予感!?
亀岡市には彼岸花の名所があるので、せっかくなのでそこも訪れてみました!
どんな旅になるのか楽しみですね!
目次
京都府亀岡市へ!
まずは並河駅へ
まずはJRの嵯峨野線の列車に乗って亀岡方面へ。
乗ったのはこんな赤くて派手な電車でした!
ちなみに嵯峨野線とは山陰本線の京都~園部間の愛称。
山陰本線は京都から日本海へ抜けて海沿いにずーっと西へ伸びており、本州の最西端である下関(正確にはその一つ手前の幡生)まで続くとっても長い路線なのです!
下りたのは亀岡駅の次にある並河駅というところ。
ここが今回の旅のスタート地点になります!
神様が亀と鯉に乗ってやってきた「大井神社」へ
並河駅を下りて東へ歩いていくと最初の目的地「大井神社」が鎮座しています。
鳥居をくぐるとすぐ正面に拝殿が建っています。京都に多い舞殿のような形の拝殿ですね!
そして中秋節だからか、拝殿にはススキが供えられていました!
拝殿の後ろに本殿が建っており、こちらの神社ではここで参拝することになっています。
早速参拝しちゃいましょう!
さて大井神社について。
御祭神は「月読命(つくよみのみこと)」「市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)」「木股命(きまたのみこと)」の三柱。
月読命は月の神様として有名ですね!
大井神社は『延喜式』に記されている式内社の一つでとても古い神社。
こちら大井神社の神様についてとても面白い伝承があります。
それによれば、大井神社の神様は京都嵐山の「松尾大社」からやってきたと伝えられています!
松尾大社といえば #18 の嵐山の旅で訪れましたね!
松尾大社のある嵐山とここ亀岡盆地は桂川(亀岡市では大堰川と呼ばれる)で繋がっています。
伝承では、松尾大社の神様は亀に乗って桂川を溯ったものの、途中の急流で進めなくなったので鯉に乗り換え、ようやく亀岡盆地の大井の地に上陸した、と伝えられています!
この伝承に因んで境内には鯉の木彫りの額や石碑、亀の甲羅や剥製など、鯉と亀に関する色々なものがありました!
一方で氏子の間では、特に鯉は神様ゆかりの魚ということで非常に大切にされ、鯉を食べることはもちろん、鯉幟を掲げることもしないのが習わしとなっています。
昔は鯉の絵すら触らなかったと言われているそうですよ!
大井神社の地図
月の神様を祀る式内社「小川月神社」へ
並河駅から再び電車に乗ります。
最近になって阪和線で走ってた電車の一部が京都に転属してきており、このように嵯峨野線などで走っています。
この電車は座席が2列+1列となっていて通路が広く、近年混雑が激しい嵯峨野線では珍重されているそうですよ!
それはさておき、並河駅から一駅先の千代川駅へ。
木造駅舎がいい雰囲気ですね!
千代川駅の北東側に架かっている橋を渡ります。
この橋の名前はズバリ「月読橋」!
歩道のタイルには満ち欠けした月があしらわれています!
柵にも月の意匠がありますね!
月読橋は大堰川の上に架かっています。
大堰川とは桂川の亀岡盆地での呼び名。ここから下って保津峡に入ると保津川、保津峡を抜けて京都盆地に入ると再び桂川と呼ばれます。
月読橋を渡ってしばらく歩くと田んぼに囲まれて小さな神社が鎮座しています。
こちらが次の目的地「小川月神社」!
この日は稲刈りの終わった田んぼも多かったですが、小川月神社前の田んぼはまさに今から収穫が始まろうというギリギリセーフのタイミング!
黄金色の稲穂が一面に輝き、しかもその手前には美しい彼岸花が咲き並んでいました!
まさかこれほど美しい光景に出会えるとは思わず、感動でつい涙が出そうに…!
景色を堪能するのもいいですが、一番の目的である神社の参拝を忘れてはいけません。
西側から参道が伸びているのでここから参拝しちゃいましょう!
神社としてはとても小さなもの。
しかしながら拝殿はやはり京都に多い舞殿風のものですね!
拝殿の後ろに鳥居、そして本殿と並んでいます。
さて小川月神社について。
御祭神は「月読命」。社名からもわかるように月の神様を祀っています!
小川月神社もまた『延喜式』に記されている式内社で古い神社です。
大堰川の近くにある低地のため応仁の頃に大洪水があったといい、神域が失われて小さな神社となったようです。
古い記録もあまり残っていないようですが、伊勢神宮が今の地に遷座する前の末社であるという記録があるそう。
この地に月の神が祀られている理由ははっきりしません。
ただ、松尾大社の近くに「月読神社」が鎮座していることは注目すべきでしょう。(詳しくは #18 の記事へ)
先ほどの大井神社で松尾大社の神様がやってきたと伝えられていることから、この辺りは松尾大社と深い関わりがあったことを窺わせます。
或いは松尾大社を祀っていた秦氏の一族が亀岡盆地にも進出して開拓したのかもしれません。
こうした動きに伴って月読神社の神も共にもたらされたことが考えられます。
先に見たように大井神社でも月読命が祀られており、やはりこれは松尾大社との関わりの中で祀られるようになったと見るのが自然でしょう。
小川月神社の地図
彼岸花が美しい!「彼岸花の里」へ
小川月神社から次の目的地へはかなりの距離があり、しかも両地を結ぶ交通機関も無いので、仕方なくひたすら歩いて行くことに。
南の方へと歩くことおよそ一時間半。
見えてきた景色がこちら!
ドン!
ドドン!!
そうなんです、ここは彼岸花の群生地として知られている場所で「彼岸花の里」と呼ばれています!
区画整理のされていない昔ながらの田んぼが広がっており、その畦には大量の彼岸花が咲き誇っています。
訪れたときはちょうど見頃!
天気も良く、心ゆくまで彼岸花を堪能できました!
ちなみにこの記事のアイキャッチ画像はここで撮影したものですよ!
彼岸花の里の地図
実際に彼岸花の多いところは上の地図のマーカーよりも少し北寄りで、そこから東側に広がる田んぼが最も美しいところ。
観光地でなくごくごく普通の田んぼなので、皆さまが訪れる際は田んぼの中には入らないようご注意くださいませ。
塩豆大福が美味しい「ひろ季や」さんへ
彼岸花の里の近くに和菓子屋があったので寄ってみました。
こちら「ひろ季や」さんでは塩豆大福が名物なのだそう。
というわけで早速購入して食べてみました!
ほどよい塩味とあんこのバランスが絶妙でとても美味!
歩き疲れた身体に染みわたります!
あの出町柳の某有名店の豆餅にも負けずとも劣らない、とても素晴らしいスイーツでした。
余談ながらこの日の夜は中秋の名月ということで、この塩豆大福もどこか満月のようにも思えてきたり。
「ひろ季や」さんの地図
亀岡盆地南端の式内社「與能神社」へ
彼岸花の里からさらに南へと歩いていきます。
この辺りは昭和三十年(1955年)に亀岡市が成立するまでは曽我部村だったところ。
亀岡盆地で南西に突き出た地形なのが特徴的。
このまま南へと進んでいくと亀岡盆地の最南端にまで到達してしまいますが、次の目的地はその少し手前。
それがこちら「與能(よの)神社」です!
鳥居をくぐるとやはり京都に多い舞殿風の拝殿。
ただし床が無く土間となっているタイプですね。
拝殿の後ろに大きな本殿が建っています。
参拝客はこちらで参拝する形。早速お参りしちゃいましょう!
さて與能神社について。
御祭神は「事代主命(ことしろぬしのみこと)」「建御名方命(たけみなかたのみこと)」「天照皇大神(あまてらすおおみかみ)」「天児屋根命(あめのこやねのみこと)」。
こちらの神社についても詳しいことははっきりしません。
とある記録によれば、四道将軍の一人である丹波道主命が国家鎮護のために祀った神社の一つとする旨が記されているようです。
「四道将軍」とは岡山を巡った #014 でも出てきましたね!
そちらで登場した大吉備津彦命は吉備方面を平定するために西方へ派遣されましたが、こちら丹波道主命はその名の通り丹波方面へ派遣された人物です!
與能神社の地図
與能神社御旅所
一方で與能神社は古くから大きな神宮寺があったとも言われています。
それは與能神社の北方およそ600mほど、現在は御旅所になっている地にあったようです。
現在はこのように小さな舞殿のような建物があるのみですが、この辺りでは堂塔の礎石も発見されているようです。
そもそもこの地は江戸時代以前は「寺村」と呼ばれる村でした。
現在の住所もこの付近には「寺」が付いており、その名残を留めています。
一説にはこの「寺村」の地名は與能神社の神宮寺に因むとも!
現在は寂しい地となっているものの小さな祠があり、その傍らには彼岸花も咲いていました。
與能神社御旅所の地図
帰路へ
さてこれで今回の目的地は全て訪れることができたので帰ることに。
帰りはバスを使っても良かったのですが、何となく歩いて亀岡駅を目指すことに。
亀岡駅まで6kmほど!
途中、もう一度彼岸花の里へ寄って名残を惜しみつつ彼岸花の写真を撮ってみました!
気が済むまで彼岸花を撮りつつ、そんなこんなで亀岡駅に到着!
亀岡駅からは当駅始発の電車に乗って帰りました。
まとめ
このように今回は中秋節にかこつけて月に因んだ神社を参拝しつつ、彼岸花を堪能する旅でした!
彼岸花は良いタイミングで鑑賞するのが結構難しく、早すぎるとスカスカなのはもちろん、遅すぎても花が白っぽく変色してしまいます。
しかし今回はまさに見頃のタイミングで、しかもお天気にも恵まれた最高の条件で鑑賞できました!
一方、鮮やかな彼岸花と黄金色の稲穂の組み合わせは美しいですが、彼岸花が咲く前に収穫してしまう田んぼも多く、稲穂と彼岸花の両方が揃う景色はなかなか見つけられません。
実際、今回も彼岸花の里ではお花は見頃だったものの、田んぼはほぼ全て収穫が終わってしまっていました。
ただ一ヶ所、小川月神社の田んぼが収穫直前だったのは本当に奇跡!
この景色が見られたことは一生忘れられないほどの思い出になることでしょう!
アイキャッチの元画像はCi-enの記事に公開しているのでこちらも是非見てみてくださいね!